

夜のとばりがおりたレオンの街。そぞろ歩く人の数は中心部に近づくにつれて増えていく。
さっきホテルで書いた絵葉書に貼る切手を買わなくちゃ。フロントで聞くと「うちは扱っていません」。え、ホテルなのにないの? 1泊1室58.32ユーロ(約6500円)の安ホテルだからかなぁ。街の新聞や雑誌を売っている店に入り「切手ある?」と聞いてみたが「no」。ま、明日からの巡礼道のどこかに、郵便局はあるでしょうよ、どこかで買うわと簡単に決めつけた私は後々、エライ目にあう。
フラメンコを愛する大阪のニシムラさん、アメリカの心理療法家のミッコ、ロンドンの翻訳家キョウコちゃんに書いた絵葉書を、なんと最終地点のサンティアゴ・デ・コンポステラまで運ぶ羽目になるのだ。まさか、この先の道中、切手が買える郵便局がないという事態を、レオン滞在中の私が知るわけはなかった。
21時、目ざすはバリオ・ウメド。カテドラルに向かう参道の東側に広がる下町の一角だ。さすが土曜日。スペインの週末の威力に度肝を抜かれる。おそろしいほど多くの人がワインやビールを飲んで、わぁわぁ盛り上がっている。みんな、飲みまくってる!
「ヨシコちゃんがよさそうだと思う店に入ってみて」とあっちゃんは言う。とりあえず近隣を一周してみて、よし、ここだ! 生ハムの塊が何本もぶらさがっている店を選んだ。
まず、ビールを1杯。「Amstel」というブランドの生ビールで、あっさりしたラガー。あっと言う間に2杯飲む。忙しそうに働くバルのおにいちゃんたちに、なかなか声がかけられない中、やっと「この店の生ハムjamon de casa」を注文した。
う、うまい!だいたい日本で生ハムを頼んでも数枚しか出てこないけど、こっちは大きな皿にスライスされたハムがたっぷり並んでいる。食べ物の量に幸せを実感するのは、昭和生まれだからかしらね。お勘定は18ユーロ。一人1000円程度。
バルでは長居しないのが鉄則。1杯飲んで次の店へはしごをするのがスペイン流だ。
人ごみをかきわけバリオ・ウメドを出る。ライトアップされたカテドラルは、昼間とは全く違った顔をしていて、荘厳な美しさに息を飲む。サン・イシドロ教会のライトアップも見事だ。石造りの建物がライトに照らされて淡い飴色に浮かび上がっている。
「さて、2軒目のバルに行きますかね、あっちゃん」「そうこなくちゃ、ヨシコちゃん」。今度はサン・イシドロ教会に近い小道を歩いてみて適当な店に入る。こっちの方が、バリオ・ウメドよりちょっとハイソな感じ。タパスが並んでいる店が普通なのかと思っていたら、案外タパスが並んでいない店が多い。カウンターに座って赤ワインを注文する。下町のバルと違って、キラキラ輝くしゃれたグラス。
タパスを頼むと、骨付き豚肉の一口唐揚げとポテトが小さなお皿に盛られてきた。
もう23時に近い。お勘定をお願いすると二人で赤ワイン2杯とタパス1皿で、3.2ユーロ。ええっ、360円!? ひとり180円!?
安い、うまい。ビバ、スペイン。酒飲み天国! るんるん気分で帰り道を歩く。こんな極楽も今宵限り。明日からはいよいよ巡礼が始まるのだ。
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