

カスティージャ・イ・レオン州とガリシア州の州境に近い私営アルベルゲは、1泊9ユーロ。手続きをすませ、2階にある部屋へ向かう。階段を登る時の太ももは、じーんと重い。1室に8台のシングルベッドが並び、ベッドサイドに小さなテーブルもある。トイレとシャワーも清潔で使いやすい。公営のアルベルゲに比べ、少し高いだけあって設備がいいし、家主の個性も感じられる。 オスピタレラ(女性の世話人)に全自動洗濯機を使わせてもらい、大きな裏庭に洗濯物を干した。芝の上に、何本もの洗濯紐が伸び、いろいろな洗濯物が風になびいている。18時過ぎまで昼間と同じ強い太陽が照りつけているので乾きもいい。
シャワーと洗濯をすませた後は、脚のマッサージに集中する。膝の周りや外反母趾の部分には「サロンパス」を張り、ふくらはぎには「エアーサロンパス」を吹き付け、膝の後ろの柔らかい部分にはハーブ成分が煉り込まれた「足すっきりシート休足時間」を巻いて綿のサポーターで保護する。サロンパスや休足時間は、高校の同級生、チサさんが持たせてくれたお餞別。脚がスースーして、気持ちいい。
まずは階下のレストランで乾杯。ハムのボカディージョを頼み、生ハムを肴にビール「エストレージャ・ガリシアEstrella Garicia」をぐびぐび。ふうむ、これまで飲んだスペインのビールでは、これがいちばんおいしいな。ブランド名を覚えておかなくちゃ。喉の乾きもおさまったから、洗濯物が乾くまで、ちょっと昼寝しますかね。
「ヨシコちゃん、起きて、起きて」。どこかで声がする。ん? 私は3時間も昼寝していたらしく、もう20時だ。あわてて階下のレストランへ降り、夕食。
違うおかずを少しずつ分け合って食べる。カルド・デ・ガジェゴ(ガリシアのスープ)は、塩漬けされた豚肉で味を整えた野菜のポタージュスープ。滋味深い味だ。
大きなミックスサラダを食べながら、ビタミンを摂取する。過激な運動で相当ビタミンを消費した気がする。
三角形に切り分けられたパイは、エンパナーダというスペインの定番料理。このエンパナーダの中には、ツナが入っている。
生ビールを1杯。その後、ジントニックを頼んだら、普段飲んでいるのの3倍程度のジンが大きなグラスに注がれた。標高が高いところで強い酒を飲むと、さすがの私も酔っぱらう。顔が真っ赤ですがな。いかん、いかん、清く美しい巡礼がぶち壊れとる。
最初の難所を越えた疲労と安心感で、22時、コテンと眠りに落ち、朝まで起きなかった。翌9月14日は6時45分に起き、昨日の残りのパンと水を食べてから7時35分に出発。まだ外は薄暗いが、オ・セブレイロ峠の頂上を目ざし、山道を登っていく。
次第に夜が明け、紺色から水色、ピンク色、オレンジ色と空の色が変わる。体も、だんだん暖まってくる。昨日はあんなに疲れていたのに、入浴、食事、睡眠でしっかり回復し、自分の心身が再生していることがうれしい。うれしいから足取りも軽くなる。
8時20分、1時間も歩かないうちに、とうとう標高1300メートルの頂上に到着。バンザイ!と思わずガッツポーズが出る。
サンティアゴ巡礼道で最も古い、9世紀に建てられた石造りの「サンタ・マリア・ラ・レアル教会」が建っている。この教会は冬の間、霧に迷う巡礼者を導くために鐘を鳴らし続けたのだそうだ。季節によっては峠の下に雲海が広がるというが、今日は全くなし。
わらぶき屋根の「パジョーサ」が見える。ヨーロッパの端っこでひっそり残るケルト民族の文化は素朴で美しい。イングランドやスコットランドの田舎町の町並みを思い出す。ごつごつする石敷きの道を歩いていると、冷たい風が頬にあたる。カフェに入って、暖かい飲物を飲もう。私はカモミール茶、あっちゃんはカフェ・コン・レチェ。
ほっこりしていると、大阪のヨシオから電話がなった。「管さんが小沢さんに圧勝したぜ」。ああ、そうだった、今日は民主党の代表選挙の日だ。日本の近未来をスペインの峠で知った。









