

サンティアゴ巡礼道には、いくつかの難所がある。最も多くの巡礼が歩く「フランス人の道」(総距離780.5km)の場合、最初の難所はフランスとスペインの国境、ピレネー山脈の峠越え。フランス側にある標高200メートルのサン・ジャン・ピエ・ド・ポーSaint—Jean Pied—de—Portから、標高1430メートルのレポエドール峠を越え、スペイン側にあるロンセスバージェスRoncesvallesを目ざす難所だ。
こんな大きな峠を越えるのではなくても、巡礼道には1日の間に何度もアップ&ダウンを繰り返す場所も多く、それも体力を消耗する。
「巡礼は人生と似ている。高い山を越える道より、何も風景が変わらない道を淡々と行く方が難しい」。大阪の国立民族博物館の「聖地★巡礼 自分探しの旅へ」特別展で放映されたビデオに出演した、元フランス軍人の巡礼、ミシェルはそう話していた。その意味ではピレネー越えより、延々と麦畑や台地が続くだけのメセタ(イベリア半島の最古の起伏。標高600メートルから700メートルの平原)をひたすら淡々と歩き続けることも難所だろう。
私たちの進む、ビジャフランカ・デル・ビエルソからサンティアゴ・デ・コンポステラへの186kmの途上にあり、巡礼道最後の難関と言われるのがオ・セブレイロ峠O Cebreiro。どんな道なんだろう。そもそも“へたれ”の私は、朝からビビりながら歩いていた。
トラバデッロから3.4kmほど歩いてラ・ポルテラ・デ・バルカルセLa Portela de Valcarceへ、2.7kmほど歩いてベガ・デ・バルカルセVega de Valcarceへ 、2.2mk歩いてルイテランRuitelánへ、1.8km歩いてラス・エレリーアスLas Herreríasへ・・・と小さな集落を過ぎていく。
巡礼がもつ「杖・ひょうたん・ホタテ貝」を無人で売っていたり、水飲み場で水をくんだり、カウベルをつけた茶色の肌の牛たちの群れとすれ違ったり・・。ほほえましい街角、牧歌的な風景。200メートル程度の勾配を、少しずつ登っていく。
ベガ・デ・バルカルセでは、おしゃれなパン工房を発見し、早めのランチをたべた。後で考えると、スペイン巡礼道で最もおいしいボカデージョ(スペインのサンドイッチ)はここのだ。店内に香ばしいパンの香りが広がり、焼き上がったばかりのパンはさくさくしている。中の生ハムの塩味もちょうどいい。一人前を半分に切ってもらい、あっちゃんと分けて食べた。貧血を治すための鉄分サプリを服用している間は、本当はカフェインを飲んではいけないのだけれど、ここだけは、と紅茶を飲んだ。カップもかわいい。
だんだん集落がなくなり、アスファルトの道も途切れ、いよいよ山道に入る。ここから600メートルをのぼる登山道が始まる。
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